翻訳書が出版されました! ―朴來群『韓国人権紀行―私たちには記憶すべきことがある』高文研、2022年9月

2年半ぶりのブログです。 コロナ禍での初めての5・18にアップした記事「言葉のなかに埋められた言葉を④-丁秀羅:二人の「ニム」のはざまで歌う」を最後に、長いこと中断してしまいました。 この記事を書いた頃、韓国で『韓国人権紀行―私たちには記憶すべき…

言葉のなかに埋められた言葉を④-丁秀羅:二人の「ニム」のはざまで歌う

「ニムのための行進曲」(1982年)―光州抗争40周年に また新緑の候、風薫る5月が巡ってきました。 しかし今年の5月は、これまでの5月と変わらないブルー・スカイ・ブルーの空が不気味に沈黙しています。通りを出歩く人影はまばらで、わずかに行き合う人々…

韓国の歌シリーズ番外編:「僕が知っているひとつの事」(1992年)

ご無沙汰しています。2017年度以降、割と大掛かりな共同研究の代表者となり、若手とベテランのあいだで右往左往する中堅の中間管理職としてあたふた過ごすうちに、気がつくと、最後のブログ更新から一年もたってしまっていました。そのうちに世界はコロナ禍…

言葉のなかに埋められた言葉を③ ―朝になれば去りゆくあなたへ:金鍾燦の別れ歌―

パク・レグンさんのこと―四半世紀を超えて 今回はシン・ヒョンウォンの続編として1987年の「터」(地)を取り上げるつもりでしたが、ハノイでの米朝会談が合意に至らなかったとの報を受け、「統一」を謳いあげたこの歌は他日を期することにしました。 先週、…

言葉のなかに埋められた言葉を② ―学生街のシン・ヒョンウォンin 1984―

前回に引き続き、和合亮一さんの詩「風に鳴る」を手掛かりに、1980年代の韓国歌謡を振り返ります。 ある日のことです ある言葉が消えてしまったのです わたしの家の庭には、今もまだ 土の中に土が埋められています 言葉の中に言葉が埋められています 土から…

言葉のなかに埋められた言葉を① ―1983年の趙容弼―

久しぶりのブログです。最後に更新したのが昨年9月、半年以上ものご無沙汰でした。 昨年から今年にかけて民主化運動を扱った韓国映画が大ヒットし、その余波で私も多忙な日々を過ごすことになりました。11月に「1987、ある闘いの真実」に寄せて、現代ビ…

時代の先取り

時代が私たちに追いついた?! 前回の更新からずいぶんと時間が経ってしまいました。 ブログを立ち上げたのは、ちょうど韓国映画「タクシー運転手」が日本で公開され、大ヒットを記録しているさなかでした。本題の「タクシー運転手」に取り掛かる前に、まず1…

亡き劇作家が「クミの五月」に込めたもの(4)〜5・18は終わらない〜

「犠牲者たちの死を無駄に盗んだ」 多くの人たちはあらかた忘れてしまっているかもしれませんが、先月12日に放映された「アナザーストーリーズ」光州事件の回について、私にはまだまだ言い足りないことがあります。なので、前々回から前回、そして今回にまで…

亡き劇作家が「クミの五月」に込めたもの(3)〜5・18は終わらない〜

宋基淑『光州の五月』を読んでほしい。けど・・・ 映画「タクシー運転手」をめぐっては、さまざまな媒体で多くの映画評を目にしますが、1980年5月のあの時あの場にいた人びとが、何をその目で見、経験し、その後どんな人生を歩んできたか、またその後景をな…

亡き劇作家が「クミの五月」に込めたもの(2)〜5・18は終わらない〜

「アナザーストーリーズ」について 6月12日、BS-NHK www.nhk.or.jp の光州事件特集が放映されました(18日再放送)。遡ること10年前、映画「光州5・18」の日本公開に先立ち、光州事件を扱ったドキュメンタリー番組を作りたいと民放局から協力依頼を受け…

亡き劇作家が「クミの五月」に込めたもの(1)〜5・18は終わらない〜

死者の「肉声」を甦らせる 昨年春、職場のメールボックスに津川泉という見知らぬ人物から書籍小包が届いていました。送られてきたのは『韓国現代戯曲集Ⅷ』(日韓演劇交流センター刊)という書物で、津川氏はそこに収められた「クミの五月」の訳者でした。 日…

映画「光州5・18」のメッセージ

1980年5月の光州民主化抗争を扱った韓国映画「タクシー運転手」が人気ですね。 ちょうど10年前に光州5・18 - Wikipediaが日本で公開されました。どちらも主人公はタクシー運転手ですが、「タクシー運転手」の主人公は外側から光州抗争を経験し、「光州5・18…

それが、問題なのだ!

はじめまして。 1970~80年代の韓国民主化運動を研究してきましたが、気がつけば、私が暮らし、体験した80~90年代の韓国もまた急速に「歴史化」されていくのを実感するこの頃。それならば、そうした自身の来し方も「歴史化」の対象として、いわば一民族誌と…